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東京高等裁判所 昭和59年(て)289号 決定

被告人 藤原慶久 ほか二人

主文

本件請求を却下する。

理由

本件請求の趣意は、弁護人葉山岳夫外七名が連名で提出した管轄移転請求書のとおりであるから、これを引用する。

所論は、要するに、本案事件は東京地方裁判所に係属し、中山善房裁判官が裁判長として審理中であるところ、同裁判長の訴訟指揮は、弁護側にとつて不当に不利なものであるほか、公判審理にあたつては、異常に厳重な警備体制がとられ、発言禁止命令や退廷命令の発せられることも多く、また、公判調書の出版に介入する動きも示されており、しかもこのような措置は、東京地方裁判所全体によつて容認され、支持されていると認められるのであつて、このような訴訟の状況に照らし、東京地方裁判所における審理によつては、裁判の公平の維持が不可能であるから、本案事件の管轄を那覇地方裁判所に移転することを求める、というのである。

そこで検討すると、所論がるる述べているところの実質は、結局本案事件を審理する裁判長の訴訟指揮ないし法廷警察権の行使あるいは庁舎管理権者の権限行使を論難するに帰し、刑訴法一七条二項、一項二号所定の管轄移転請求ができる場合にあたらない。

よつて、本件請求は理由がないから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 鬼塚賢太郎 田尾勇 阿蘇成人)

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